柄を立てた者なので、細川一家では賞美していた男であった。澄元のあるところへ、澄之という者が太政大臣家から養子に来られたので、契約の使者になった薬師寺与一は阿波の細川家へ対して、また澄元に対して困った立場になった。そこで根が律義勇猛のみで、心は狭く分別は足らなかった与一は赫《かっ》としたのである。この頃主人政元はというと、段※[#二の字点、1−2−22]魔法に凝《こ》り募《つの》って、種※[#二の字点、1−2−22]の不思議を現わし、空中へ飛上ったり空中へ立ったりし、喜怒も常人とは異り、分らぬことなど言う折もあった。空中へ上《のぼ》るのは西洋の魔法使もする事で、それだけ永い間修業したのだから、その位の事は出来たことと見て置こう。感情が測られず、超常的言語など発するというのは、もともと普通凡庸の世界を出たいというので修業したのだから、修業を積めばそうなるのは当然の道理で、ここが慥《たしか》に魔法の有難いところである。政元からいえば、どうも変だ、少し怪しい、などといっている奴は、何時《いつ》までも雪を白い、烏を黒いと、退屈もせずに同じことを言っている扨※[#二の字点、1−2−22]《さてさて
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