中[#一]、迯[#二]帰於夫家[#一]」とあるところを見ると、妻が拘はれたやうでもある。「妾恒存[#二]真婦之心[#一]」「妾之舎弟等成[#レ]謀」とあるところを見ると、妾のやうでもある。妻妾二字、形相近いから何共|紛《まぎ》らはしいが、妻子同共討取の六字があるので、妻子は殺されたものと読んで居る人もある。どちらにしても強くは言張り難いが、「然而将門尚与[#二]伯父[#一]為[#二]宿世之讐[#一]」といふ句によつて、何にせよ此事が深い怨恨《ゑんこん》になつた事と見て差支《さしつかへ》は無い。しばらく妻子は殺されて、拘《とら》はれた妾は逃帰つた事と見て置く。
此事あつてより将門は遺恨《ゐこん》已《や》み難《がた》くなつたであらう、今までは何時《いつ》も敵に寄せられてから戦つたのであるが、今度は我から軍を率《ひき》ゐて、良兼が常陸《ひたち》の真壁郡の服織《はつとり》、即ち今の筑波山の羽鳥に居たのを攻め立つた。良兼は筑波山に拠《よ》つたから羽鳥を焼払ひ、戦書を贈《おく》つて是非の一戦を遂《と》げようとしたが、良兼は陣を堅くして戦は無かつたので、将門は復讐的に散※[#二の字点、1−2−22
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