ぼれ解《とけ》ぬ濡苧《ぬれお》の縺《もつれ》の物思い、其色《そのいろ》嫌よと、眼《め》を瞑《ふさ》げば生憎《あいにく》にお辰の面影あり/\と、涙さしぐみて、分疏《いいわけ》したき風情、何処《どこ》に憎い所なし。なる程定めなきとはあなたの御心、新聞一枚に堅き約束を反故《ほご》となして怒り玉うかと喞《かこ》たれて見れば無理ならねど、子爵の許《もと》に行《ゆき》てより手紙は僅《わずか》に田原が一度|持《もっ》て来《きた》りし計《ばか》り、此方《こなた》から遣《や》りし度々の消息、初《はじめ》は親子再会の祝《いわい》、中頃は振残《ふりのこ》されし喞言《かこちごと》、人には聞《きか》せ難《がた》きほど耻《はずか》しい文段《もんだん》までも、筆とれば其人の耳に付《つけ》て話しする様《よう》な心地して我しらず愚《おろか》にも、独居《ひとりい》の恨《うらみ》を数うる夜半《よわ》の鐘はつらからで、朧気《おぼろげ》ながら逢瀬《おうせ》うれしき通路《かよいじ》を堰《せ》く鶏《とり》めを夢の名残の本意《ほい》なさに憎らしゅう存じ候《そろ》など書《かい》てまだ足らず、再書《かえすがき》濃々《こまごま》と、色好み
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