く》み出《いだ》すより廃《すた》れて、当時は手早く女は男の公債証書を吾名《わがな》にして取り置《おき》、男は女の親を人質《ひとじち》にして僕使《めしつか》うよし。亭主《ていしゅ》持《もつ》なら理学士、文学士|潰《つぶし》が利く、女房|持《も》たば音楽師、画工《えかき》、産婆三割徳ぞ、ならば美人局《つつもたせ》、げうち、板の間|※[#「てへん+(上/下)、第3水準1−84−76]《かせ》ぎ等の業《わざ》出来て然《しか》も英仏の語に長じ、交際上手でエンゲージに詫付《かこつけ》華族の若様のゴールの指輪一日に五六位《いつつむつくらい》取る程の者望むような世界なれば、汝《なんじ》珠運《しゅうん》能々《よくよく》用心して人に欺《あざむ》かれぬ様《よう》すべしと師匠教訓されしを、何の悪口なと冷笑《あざわらい》しが、なる程、我《われ》正直に過《すぎ》て愚《おろか》なりし、お辰《たつ》を女菩薩《にょぼさつ》と思いしは第一の過《あやま》り、折疵《おれきず》を隠して刀には樋《ひ》を彫るものあり、根性が腐って虚言《うそ》美しく、田原が持《もっ》て来た手紙にも、御《おん》なつかしさ少時《しばし》も忘れず何《いず
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