欲《ほ》しとならばお辰|住居《すまい》たる家|尚《なお》能《よか》らん、畳さえ敷けば細工部屋にして精々《せいぜい》一ト月位|住《すま》うには不足なかるべし、ナニ話に来るは謝絶《ことわる》と云わるゝか、それも承知しました、それならば食事を賄《まかな》うより外に人を通わせぬよう致しますか、然《しか》し余り牢住居《ろうずまい》の様《よう》ではないか、ムヽ勝手とならば仕方がない、新聞|丈《だ》けは節々《せつせつ》上《あげ》ましょう、ハテ要《い》らぬとは悪い合点《がてん》、気の尽《つき》た折は是非世間の面白|可笑《おかし》いありさまを見るがよいと、万事親切に世話して、珠運が笑《えま》し気《げ》に恋人の住《すみ》し跡に移るを満足せしが、困りしは立像刻む程の大きなる良《よき》木なく百方|索《さが》したれど見当らねば厚き檜《ひのき》の大きなる古板を与えぬ。
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    第九 如是果《にょぜか》

      上 既《すで》に仏体《ぶったい》を作りて未得《みとく》安心《あんしん》

 勇猛《ゆうみょう》精進潔斎怠らず、南無帰命頂礼《なむきみょうちょうらい》と真心を凝《こら》し肝胆《かんたん
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