|云付《いいつけ》さするから遠慮なくお霜《しも》を使《つか》え、あれはそなたの腰元だから先刻《さっき》の様《よう》に丁寧《ていねい》に辞義なんぞせずとよい、芝屋や名所も追々に見せましょ。舞踏会《ぶとうかい》や音楽会へも少し都風《みやこふう》が分って来たら連《つれ》て行《ゆき》ましょ。書物は読《よめ》るかえ、消息往来|庭訓《ていきん》までは習ったか、アヽ嬉しいぞ好々《よしよし》、学問も良い師匠を付《つけ》てさせようと、慈愛は尽《つき》ぬ長物語り、扨《さて》こそ珠運が望み通り、此《この》女菩薩《にょぼさつ》果報めでたくなり玉いしが、さりとては結構づくめ、是は何とした者。
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第八 如是力《にょぜりき》
上 楞厳呪文《りょうごんじゅもん》の功も見えぬ愛慾《あいよく》
古風作者《こふうさくしゃ》の書《かき》そうな話し、味噌越《みそこし》提げて買物あるきせしあのお辰《たつ》が雲の上人《うえびと》岩沼《いわぬま》子爵《ししゃく》様《さま》の愛娘《まなむすめ》と聞《きい》て吉兵衛仰天し、扨《さて》こそ神も仏も御座る世じゃ、因果|覿面《てきめん》地ならしのよい所
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