さして笑ったぞ、コレ珠運、オイ是は仕《し》たり、孫でも無かったにと罪のなき笑い顔して奇麗なる天窓《あたま》つるりとなでし。
中 実生《みしょう》二葉《ふたば》は土塊《つちくれ》を抽《ぬ》く
我今まで恋と云《い》う事|為《し》たる覚《おぼえ》なし。勢州《せいしゅう》四日市にて見たる美人三日|眼前《めさき》にちらつきたるが其《それ》は額に黒痣《ほくろ》ありてその位置《ところ》に白毫《びゃくごう》を付《つけ》なばと考えしなり。東京|天王寺《てんのうじ》にて菊の花片手に墓参りせし艶女《えんじょ》、一週間思い詰《つめ》しが是《これ》も其《その》指つきを吉祥菓《きっしょうか》持《もた》せ玉《たも》う鬼子母神《きしぼじん》に写してはと工夫せしなり。お辰《たつ》を愛《めで》しは修業の足しにとにはあらざれど、之《これ》を妻に妾《めかけ》に情婦《いろ》になどせんと思いしにはあらず、強《し》いて云わば唯《ただ》何となく愛《めで》し勢《いきおい》に乗りて百両は与《あたえ》しのみ、潔白の我《わが》心中を忖《はか》る事出来ぬ爺《じい》めが要《いら》ざる粋立《すいだて》馬鹿《ばか》々々し、一生に一
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