ゅう》、鳥部野《とりべの》一片の烟《けむり》となって御法《みのり》の風に舞い扇、極楽に歌舞の女菩薩《にょぼさつ》一員《いちにん》増したる事疑いなしと様子知りたる和尚様《おしょうさま》随喜の涙を落《おと》されし。お吉|其儘《そのまま》あるべきにあらねば雇い婆《ばば》には銭《かね》やって暇《ひま》取らせ、色々|片付《かたづく》るとて持仏棚《じぶつだな》の奥に一つの包物《つつみもの》あるを、不思議と開き見れば様々の貨幣《かね》合せて百円足らず、是はと驚きて能々《よくよく》見るに、我身《わがみ》万一の時お辰《たつ》引き取って玉《たま》わる方へせめてもの心許《こころばか》りに細き暮らしの中《うち》より一銭二銭積み置きて是をまいらするなりと包み紙に筆の跡、読みさして身の毛立つ程悲しく、是までに思い込まれし子を育てずに置《おか》れべきかと、遂《つい》に五歳《いつつ》のお辰をつれて夫と共に須原《すはら》に戻《もど》りけるが、因果は壺皿《つぼざら》の縁《ふち》のまわり、七蔵本性をあらわして不足なき身に長半をあらそえば段々悪徒の食物《くいもの》となりて痩《や》せる身代の行末《ゆくすえ》を気遣《きづか》い、
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