らば命さえ呉《くれ》てやる珠運も、何の操なきおのれに未練残すべき、其《その》生白《なましら》けたる素首《そっくび》見《みる》も穢《けがら》わしと身動きあらく後向《うしろむき》になれば、よゝと泣声して、それまでに疑われ疎《うと》まれたる身の生甲斐《いきがい》なし、とてもの事|方様《かたさま》の手に惜《おし》からぬ命|捨《すて》たしと云《いう》は、正しく木像なり、あゝら怪しや、扨《さて》は一念の恋を凝《こら》して、作り出《いだ》せしお辰の像に、我魂の入《いり》たるか、よしや我身の妄執《もうしゅう》の憑《の》り移りたる者にもせよ、今は恩愛|切《きっ》て捨《すて》、迷わぬ初《はじめ》に立帰《たちかえ》る珠運に妨《さまたげ》なす妖怪《ようかい》、いでいで仏師が腕の冴《さえ》、恋も未練も段々《きだきだ》に切捨《きりすて》くれんと突立《つったち》て、右の手高く振上《ふりあげ》し鉈《なた》には鉄をも砕くべきが気高く仁《やさ》しき情《なさけ》溢《あふ》るる計《ばかり》に湛《たた》ゆる姿、さても水々として柔かそうな裸身《はだかみ》、斬《き》らば熱血も迸《ほとばし》りなんを、どうまあ邪見に鬼々《おにおに》し
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