なんことは忍ぶべからず、平等の見は我が敵なり、差別の観は朕が宗なり、仏陀は智なり朕は情なり、智水千頃の池を湛へば情火万丈の※[#「陷のつくり+炎」、第3水準1−87−64]《ほのほ》を拳げん、抜苦与楽《ばつくよらく》の法|可笑《をかし》や、滅理絶義の道こゝに在り、朕が一脚の踏むところは、柳紅に花緑に、朕が一指のそれと指すところは、烏も白く鷺も黒し、天死せしむべく地舞はしむべく、日月暗からしむべく江海涸れしむべし、頑石笑つて且歌ひ、枯草花さいて、しかも芬《かを》る、獅子は美人が膝下に馴れ大蛇は小児の坐前に戯る、朔風暖かにして絳雪《かうせつ》香しく、瓦礫《ぐわれき》光輝を放つて盲井醇醴《まうせいじゆんれい》を噴き、胡蝶声あつて夜深く相思の吟をなす、聾者《ろうしや》能く聞き瞽者《こしや》能く見る、劒戟も折つて食《くら》ふべく鼎钁《ていくわく》も就いて浴すべし、世界はほと/\朕がまゝなり、黄身《わうしん》の匹夫、碧眼の胡児《こじ》、烏滸《をこ》の者ども朕を如何にか為し得べき、心とゞめてよく見よや、見よ、やがて此世は修羅道《しゆらだう》となり朕が眷属となるべきぞ、あら心地快や、と笑ひたまふ御声ば
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