《じやうとうしやうがく》、広度衆生《くわうどしゆじやう》、皆因提婆達多善知識故《かいいんだいばだつたぜんちしきご》と説かれ侍るを、誰憎しとか思す、恐れ多けれど、そもや誰人憎しとか思す、怨敵まことは道の師なり、怨敵まことは道の師なり、眼《まなこ》をあげて大千三千世界を観るに、我が皇《きみ》の怨敵たらんもの、いづくにか将《はた》侍るべき、まこと我が皇の御敵《おんあだ》たらんものの侍らば、痩せたる老法師の力|乏《とも》しくは侍れども、御力を用ゐさせ玉ふまでもなく、大聖威怒王《だいしやうゐぬわう》が折伏《しやくぶく》の御劒をも借り奉り、迦楼羅《かるら》の烈炎の御猛威《おんみやうゐ》にも頼《よ》り奉りて、直に我が皇の御敵を粉にも灰にも摧《くだ》き棄て申すべし、さりながら皇の御敵の何処《いづく》の涯にもあらばこそ、巴豆《はづ》といひ附子《ぶし》といふも皆是薬、障礙《しやうげ》の悪神《あくじん》毘那耶迦《びなやか》も本地は即《すなはち》毘盧沙那如来《びるしやなによらい》、此故に耆婆《きば》眼《まなこ》を開けば尽大地の草木、保命《ほうみやう》の霊薬ならぬも無く、仏陀《ぶつだ》教を垂るれば遍虚空《へんこ
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