惜く、云ひ甲斐無くも過《あやま》たせたまふものかな、烈日が前の片時雨、聖智が中《うち》の御一失、疾《と》く/\御心を翻《ひるが》へしたまひて、三趣に沈淪し四生に※[#「足へん+令」、122−上−1]※[#「足へん+屏」、122−上−1]《れいへい》するの醜さを出で、一乗に帰依し三昧に入得《につとく》するの正きに仗《よ》り御坐しませ、宿福広大にして前業《ぜんごふ》殊勝に渡らせたまふ御身なれば、一念※[#二の字点、1−2−22]頭の転じたまふを限に弾指《たんし》転※[#「目+旬」、第3水準1−88−80]《てんけん》の間も無く、神通の宝輅《はうらく》に召し虚空を凌いで速かに飛び、真如の浄域に到り、光明を発して長《とこし》へに熾《さかん》に御坐しまさんこと、などか疑ひの侍るべき、仏魔は一紙、凡聖《ぼんじやう》は不二、煩悩即菩提《ぼんなうそくぼだい》、忍土即浄土《にんどそくじやうど》、一珠わづかに授受し了れば八歳の竜女当下《りゆうによたうか》に成仏すと承はる、五障女人《ごしやうによにん》の法器にあらぬにだに猶彼が如し、まして十善天子の利根に御坐すに、いかで正覚を成し玉はざらん、御経には成等正覚
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