にも、画には鯛を描けり。腐つても鯛と云へる諺は余り好ましからず。
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東 やす物買ひの銭失ひ
西 やみに鉄砲
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 低価の貨物を買ふ勿《なか》れとは江戸の人の気象をあらはし、闇夜に鉄砲を放つがごときことを為すを嘲るも亦、京坂地方の人の気象をあらはせり。
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東 負けるは勝
西 まかぬ種子《たね》は生えぬ
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 気を負ひて忍びざる東に、負けるは勝の諺の用ゐらるゝもおもしろく、理智に長けたる人多き西に、播かぬ種子は生えぬといへる諺の用ゐられあるは当に然るべきやうに思はる。
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東 芸は身を助ける
西 下駄に焼味噌
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 東のは意明らかなり、西のは汚潔混淆の愚を斥けたるにや、其の意不明にして確解すべからず。
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東 ふみはやりたし書く手は持たず
西 ふくろうの宵だくみ
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 東のは幼にして学ばざりしを
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