と》過ぐれば熱さ忘るゝ
西 鑿といへば鎚
[#ここから2字下げ、小さい活字]
東のは懲りて復これを忘るゝものを云ひ、西のは人須らく智を運し功を速《すみ》やかにすべきを云へり。西のは東の方にては云はぬ諺なるが、鑿は鉄鎚を待つて其の功を遂ぐるものなれば、鑿をと云はば鎚をも添へて与ふるやうにせよとなり。東のは失敗の径路を指摘して戒め、西のは成功の用意の如何にすべきかを教ふ。西のの方おもしろし。
[#ここで字下げ終わり、小さい活字も終わり]
東 鬼に鉄棒《かなぼう》
西 鬼も一八
[#ここから2字下げ、小さい活字]
既に強力なり、加ふるに利器を以てす、人誰か之に当るを得ん。東のは之を説けり。物皆時あり、至醜のものと雖《いへど》も小美の時無くばあらず。西のは之を談ぜるなり。両諺共に佳。
[#ここで字下げ終わり、小さい活字も終わり]
東 くさいものには蓋
西 くさいものに蝿
[#ここから2字下げ、小さい活字]
東のは臭腐のもの須らく之を掩ふべきを云ひ、西のは穢は又おのづから穢を引きて、臭物の蒼蝿を致すことを云へり。古は西の短語「くさいものに蝿」と無くして「くさつても鯛」とありし由、今のかるた
前へ
次へ
全17ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング