事云へば鬼が笑ふ
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近を釈《お》きて遠を謀るは愚人の常態にして、陋なること笑ふべければ、西の諺の方は甚だ佳趣あり。楽あれば即ち苦あるは免る能はざるの数ながら、語に奇味あること無し。
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東 無理がとほれば道理引込む
西 むまの耳に風
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東は理もまた時ありて屈伸することを云ひて、世情の頼む可からざるを憤り、西は馬耳東風何の饗応無きを云へり。
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東 うそから出た真
西 氏より育ち
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仮を弄して真を成す、世おのづから其の事多く、橘を植ゑて枳《からたち》に変ずる、土之をして然らしむるなり。二語共に佳、悦ぶ可し。
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東 芋の煮えたも御存知ない
西 鰯の頭も信心がら
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東のは迂闊漢を刺《そし》りて骨に入り、西のは一切世界唯心所造の理を片言に道破せり。共におもしろし。
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東 咽頭《のども
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