由つて来ること遠きを云へり。明眼論《めいがんろん》に本づける西の諺おもしろし。
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東 月夜に釜をぬかれる
西 東におなじ
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 闇夜には物を奪はれず、躓くは坦途に於てする習ひ、東西異なる無しと見ゆ。一※[#「口+劇のへん」、読みは「きょ」、第3水準1−15−24]す可し。
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東 念には念を入れよ
西 猫に小判
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 東は事に処し物に接する須《すべか》らく精確詳密にすべきを云ひ、西は機に投じ縁に応ぜざれば金珠も土礫に等しきを云へるなるが、東の方の諺は詩趣無く、西のは佳意無し。
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東 なきつらに蜂
西 なす時の閻魔顔
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 禍は単《ひと》り到らず、悲を破るの勇気無きものは復《また》新に悲を得るを云へるは東、人情嶮峻にして金を借る時は仏顔をなし、返す時は閻魔顔をなすの陋態を罵れるは西のなり。
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東 楽あれば苦あり
西 来年の
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