て地獄
西 義理と犢鼻褌
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 東のは、耳聞と目撃との甚だ異なるを云ひ、西のは、欠く能はざるものの畢竟欠くべきにあらざるを云へるなり。東の方の諺佳趣あり。
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東 ゆだん大敵
西 ゆうれいの浜風
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 東のは意義顕露なり。西のは情趣晦昧なり。幽魂の海風に吹き散ぜらるゝが如く、力無きものの、終《つひ》に自ら保つ能はざるを云へるか。西の諺、東には行はれず。
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東 めの上のたん瘤
西 めくらのかきのぞき
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 眼上の肉瘤、甚だ厭ふ可く、盲者の目を張る、又何の益あらんとなり。二諺共に佳趣無し。
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東 身から出た錆
西 身は身でとほる
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 東のは※[#「金+肅」、読みは「しゅう」、第3水準1−93−39]花外より到るにあらず、災星多くは自ら招くを云ひ、西のは、口あれば食はざること無く、肩あれば衣ざること無く、憂ふる勿れ身あれば即ち活くに足る
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