のは思はぬ災を受くることありといふ意、又は其の反対に、才無き者も能く勤むれば幸を得ること有りといふの意にして、西のは、其の語の用ゐらるゝ場合不明なれども、既に人の客たれば、いや/\ながらも三盃を斟むべし、といふ意か、いや/\三盃又三杯とつゞけてもいふことあれば、薄※[#二の字点、1−2−22]《はく/\》の酒を酌むに、いや/\ながらも杯を重ぬれば、其の中にはおのづから酔ひて之を楽むに至るといふことを云へるか、或は又虚礼謙譲の陋《いや》しきを笑へる意の諺なるべし。
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東 論より証拠
西 論語読みの論語知らず
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 東のは寸鉄人を殺すの語、西のは冷罵骨に入るの句なり。
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東 花より団子
西 針の孔から天
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 東のは徒美《とび》の益なく、実効の尊ぶべきを云ひ、西のは小を以て大を尽す可からざることを云へるにて、東京の、よの字の短語「よしの髄より天」といへると其の意おなじ。古は西のは、「八十の手習」といへるなりしとか。
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