小さい活字も終わり]
東 にくまれ子は世にはびこる
西 おなじ
[#ここから2字下げ、小さい活字]
 舐犢《しとく》の愛を受けて長ずるものを貶して、祖母《ばゞあ》育ちは三百|廉《やす》いといへる諺に引かへ、憎まれ子の世に立ちて名を成し群を抜くことを云へる、東西共に同じきもおもしろし。
[#ここで字下げ終わり、小さい活字も終わり]
東 ほね折り損のくたびれ儲け
西 ほとけの顔も三度
[#ここから2字下げ、小さい活字]
 徒労の身を疲らす有るのみなるを嘆じたるは東の語、慈顔も之を冒すこと数※[#二の字点、1−2−22]すれば怒ることを云へるは西の語なり。
[#ここで字下げ終わり、小さい活字も終わり]
東 屁を放《ひ》つて尻すぼめ
西 下手な長談義
[#ここから2字下げ、小さい活字]
 東は後悔のはかなきを笑ひ、西は拙者の人を苦むるを嘲りたり。
[#ここで字下げ終わり、小さい活字も終わり]
東 年寄の冷水
西 豆腐に鎹《かすがひ》
[#ここから2字下げ、小さい活字]
 老人のなまじひに壮者を学ぶを危めるは東の諺、鉄釘至剛なるも至軟の物を如何ともする能はざるを歎ぜるは西の語。
[#ここで字下げ終わり、小さい活字も終わり]
東 塵積つて山
西 地獄の沙汰も金
[#ここから2字下げ、小さい活字]
 東は小善小悪も之を易《あなど》り之を軽んず可からざるを云ひ、西は黄金の力の広大無辺なるを云へるなり。
[#ここで字下げ終わり、小さい活字も終わり]
東 律義者《りちぎもの》の子沢山
西 綸言《りんげん》汗の如し
[#ここから2字下げ、小さい活字]
 東は花柳に沈湎《ちんめん》せざるもののおのづからにして真福多く天佑有るを云ひ、西は帝王の言の出でゝ反《かへ》らざることを云へり。
[#ここで字下げ終わり、小さい活字も終わり]
東 ぬす人の昼寐
西 ぬかに釘
[#ここから2字下げ、小さい活字]
 守る者は足らず、攻むるものは余りあるを云へるは東の語也、抵抗せず又随順せざる者の如何ともしがたきを云へるは西の語なり。
[#ここで字下げ終わり、小さい活字も終わり]
東 るりもはりも照せば光る
西 類を以て聚る
[#ここから2字下げ、小さい活字]
 美玉日に遇へば各※[#二の字点、1−2−22]其の光を発するを云へるは東、類を以て聚まり群を以て分れて吉凶の生ずるを説ける繋辞伝の語を挙げ用ゐたるは西
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