實にも寫意にも筆法にも何にも拘らはずに描いたり、先史時代の土器のやうなものを造つたり、古風な家具を※[#「鹿/(鹿+鹿)」、第3水準1−94−76]樸な方法でこしらへたり、狹いところへ自然生の雜木に篠をあしらつて、田舍の野原の端か、塚原の末のやうな庭を作つたり、筆墨に親しんで日を送ることの多いにもかゝはらず甘泉宮や長樂未央の瓦でも何でも無い丸瓦の裏を硯にして使つてゐたり、室内の造作を薪のやうなもので手ごしらへに歪みなりに埒明けたりして、それで面白がつてゐたので、普通の人は畸人だと噂したものなのだ。しかしその異樣なる物の中に、人をして面白いと思はせることも勿論あつたのである。
何でも彼でも自分でして見たのであるが、「疊ばかりは別に面白いわけには行かなかつた」と或時語られたのを聽いたことがあつた。して見ると疊までも手製を試みたのかと驚かされた。手染め澁染の衣は、これは慥に畸人の大槻如電と相客になつた時、流石の如電先生もその澁臭いのに悲鳴を擧げさせられたといふ。
君は何でもない人が何でもない談をするのを聽いてゐても、時※[#二の字点、1−2−22]、おもしろい、といふのが癖のやうなものだ
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