ざりますまいか。」
「おもしろい。されば愈々《いよいよ》損得に引廻わされぬ者を世間の心《しん》にせねばならぬ。」
「ところが、見す見す敗《ま》けるという方に附く者は今の世――何時の世にも少いでござりましょう。されば損得に引廻されないような大将の方に旗の数が多くなろう理は先ず以て無いことでござれば、そこで世の中は面倒なのでござる。」
「癪に触る。損得勘定のみに賢い奴等、かたッぱしからたたき切るほかは無い。」
「しかし、申しては憚《はばか》りあることでござれど」
と声を落して、粛然として、
「正覚寺の、さきだっての戦《いくさ》の如く、桃井、京極、山名、一色殿等の上に細川殿まで首《しゅ》となって、敵勢の四万、味方は二三千とあっては、如何《いかに》とも致し方無く、公方、管領の御職位、御権威は有っても遂に是非なく、たたき切ろうにも力及ばず、公方は囚《とら》われ、管領は御自害、律儀者の損得かまわずは、世を思切って、僧になって了休となるような始末、彼などは全く損得の沖を越えたものでござる。人柄はまことになつかしいものでござるが、世捨人入道雲水ばかり出来ても善人が世に減る道理。又管領殿御臣下も多人数御
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