ぶ、また自然の偶属《ぐうぞく》にして半離すべからざるものなればなり。
○荒川。隅田川の上流の称なり。隅田川とは隅田《すだ》を流るゝを以《も》て呼ぶことなれば、隅田村以上千住宿あたりを流るゝをば千住川と呼び、それより以上をば荒川と呼ぶ習ひなり。水源《みなもと》は秋の日など隅田堤より遠く西の方《かた》に青み渡りて見ゆる秩父郡の山※[#二の字点、1−2−22]の間にて、大滝村といへるがこの川の最上流に位する人里なれば、それより奥は詳しく知れねど、おもふに甲斐境の高山幽谷より出で来るなるべし。水源地附近のありさまは予が著はしゝ『秩父紀行』、ならびに『新編武蔵風土記』等を読みて知るべし。荒川の東京に近づくは豊島の渡《わたし》あたりよりなり。
○豊島の渡は荒川の川口の方より幾屈折して流れ来りて豊島村と宮城村との間を過ぐる処にあり。豊島村の方より渡りて行く事|僅少《わずか》にして荒川堤に出づ。堤は即ち花の盛りの眺望《ながめ》好き向島堤の続きにして、千住駅を歴《へ》てこゝに至り、なほ遠く川上の北側に連なるものなり。豊島の渡より川はかへつて西南に向つて流れて、やがて
○石神川《しやくしがわ》を収めてまた
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