些細なやうで重大な事
幸田露伴
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)如何《どう》云ふ様に
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「目なり」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
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人間には色々の仕草があるがつゞめて言へば、事に処すると、物に接するとの二ツになる、事に処すると云ふは、其処に生じて来た或る事情に対して、如何《どう》云ふ様に自分の態度を執るか、了見を定《き》めるか、口を利くか、身体を動かすか、智慧を回《めぐ》らすか、力を用ふるかといふ事である。
事に処するは、非常に多端である。何となれば、其処に生ずる事情は、際限なく種々様々な形を以て現はれて来るから、之に対する道も決して一通りや二通りでない訳で、大体は道理の正しきに従ひ、人情の美しきに従ふべきではあるが、さりとて一様に言ひ切れぬ。或時は手強く、或時は誠実一方で、亦或時は便宜に従ふを宜しいとする場合もある。
そこで、今それは暫くとして、物に接するといふ方を申さうならば、一体この物といふのは事と違つて死物である。事の方は事情
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