つて、西の方で出来たイカサマ物を東の方の田舎へ埋めて置いて、掘出し党に好い掘出しを仕たつもりで悦ばせて、そして釣鉤へ引掛けるなどといふ者も出て来る。京都出来のものを朝鮮へ埋めて置いて、掘出させた顔で、チャンと釣るなぞといふケレン商売も始まるのである。若し真に掘出しをする者が有れば、それは無頼溌皮の徒で無ければならぬ。又其の掘出物を安く買つて高く売り、其間に利を得る者があれば、それは即ち営業税を払つてゐる商売人で無ければならぬ。商売人は年期を入れ資本を入れ、海千山千の苦労を積んでゐるのである。毎日※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]真剣勝負をするやうな気になつて、長い物、悪い物、二番手、三番手、いづれ結構上※[#二の字点、1−2−22]の物は少い世の中に、一[#(ト)]眼見損へば痛手を負はねばならぬ瀬に立つて、いろ/\さまざまあらゆる骨董相応の値ぶみを間違はず付けて、そして何がしかの口銭を得ようとするのが商売の正しい心掛である。何様して油断も隙もなりはしない。波の中に舟を操つてゐるやうなものである。波瀾重畳が此の商買の常である。そこへ素人が割込んだとて何が出来よう
前へ
次へ
全43ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング