のも左様いふ人※[#二の字点、1−2−22]で、悪気は無くとも少し慾気が手伝つてゐると、百貨店で品物を買つたやうな訳では無い目にも自業自得で出会ふのである。中には些《ちと》性《しやう》が悪くて、骨董商の鼻毛を抜いて所謂掘出物をする気になつてゐる者もある。骨董商は一寸取片付けて澄まして居るものだが、それだつて何も慈善事業で店を開いてゐる訳では無い、其道に年期を入れて資本を入れて、それで妻子を過してゐるのだから、三十円のものは口銭や経費に二十円遣つて五十円で買ふつもりでゐれば何の間違は無いものを、五十円のものを三十円で買ふ気になつて居ては世の中がスラリとは行かない。五円のものを三十円で売附けられるやうなことも、罷り間違へば出来ることになる道理だ。それを弥《いや》が上にもアコギな掘出し気で、三円五十銭で乾山の皿を買はうなんぞといふ図※[#二の字点、1−2−22]しい料簡を腹の底に持つて居たとて、何の、乾也だつて手に入る訳は有りはしない。勧業債券は一枚買つて千円も二千円もになる事は有つても、掘出しなんといふことは先以て無かるべきことだ。悪性の料簡だ、劣等の心得だ、そして暗愚の意図といふものだ。
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