[#(ト)]流れを守つて、画なら画で何派の誰を中心にしたところとか、陶器なら陶器で何窯《なにがま》の何時頃とか、書なら書で儒者の誰※[#二の字点、1−2−22]とか、蒔絵なら蒔絵で極古いところとか近いところとか、と云ふやうに心を寄せ手を掛ける。此の「筋の通つた蒐集研究をする」これは最も賢明で本当の仕方であるから、相応に月謝さへ払へば立派に眼も明き味も解つて来て、間違無く、最も無難に清娯を得る訳だから論は無い。しかるに又大多数の人※[#二の字点、1−2−22]はそれでは律義過ぎて面白くないから、コケが東西南北の水転《みづてん》にあたるやうに、雪舟くさいものにも眼を遣れば応挙くさいものにも手を出す、歌麿がゝつたものにも色気を出す、大雅堂や竹田ばたけにも鍬を入れたがる、運が好ければ韓幹《かんかん》の馬でも百円位で買はふ気で居り、支那の笑話にある通り、杜荀鶴《とじゆんかく》の鶴の画なんといふ変なものをも買はぬとは限らぬ勢で、それでも画のみならまだしもの事、彫刻でも漆器でも陶器でも武器でも茶器でもといふやうに気が多い。左様いふ人※[#二の字点、1−2−22]は甚だ少く無いが、時に気の毒な目を見る
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