ん》の使つた料理鍋、禹《う》の穿いたカナカンジキだのといふやうなものを素敵に高く買はすべきで、此《これ》は是れ有無相通、世間の不公平を除き、社会主義者だの無産者だのといふむづかしい神※[#二の字点、1−2−22]の神慮をすゞしめ奉る御神楽の一座にも相成る訳だ。
が、それはそれで可いとして、年寄でも無く、二才でも無く、金持でも無く、文無しでも無い、所謂中年中産階級の者でも骨董を好かぬとは限らない。斯様いふ連中は全く盲人《めくら》といふでも無く、さればと云つて高慢税を進んで沢山納め奉るほどの金も意気も無いので、得て中有に迷つた亡者のやうになる。ところが書画骨董に心を寄せたり手を出したりする者の大多数は此の連中で、仕方が無いから此の連中の内で聡明でも有り善良でも有る輩《やから》は、高級骨董の素晴らしい物に手を掛けたく無い事は無いが、それは雲に梯《かけはし》の及ばぬ恋路みたやうなものだから、矢張り自分等の身分相応の中流どころの骨董で楽しむことになる。一番聡明善良なるものは分科的専門的にして、自分の関係しようとする範囲を成るべく狭小にし、そして歳月を其中で楽しむ。所謂一[#(ト)]筋を通し、一
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