《しゃれ》切った税というもので、いやいや出す税や、督促を食った末に女房《にょうぼ》の帯を質屋へたたき込んで出す税とは訳が違う金なのだから、同じ税でも所得税なぞは、道成寺《どうじょうじ》ではないが、かねに恨《うらみ》が数※[#二の字点、1−2−22]ござる、思えばこのかね恨《うら》めしやの税で、こっちの高慢税の如きは、金と花火は飛出す時光る、花火のように美しい勢《いきおい》の好《い》い税で、出す方も、ソレ五万両、やすいものだ、と欣※[#二の字点、1−2−22]《にこにこ》として投出《なげだ》す、受取る方も、ハッ五万円、先ずこれ位のものをお納めして置きますれば私《わたくし》も鼻が高うございますると欣※[#二の字点、1−2−22]《にこにこ》して受取る。悪い心持のする景色ではあるまい。誰だって高慢税は出したかろうではないか。自分も高慢税は沢山出したい。が、不埒千万《ふらちせんばん》、人生五十年過ぎてもまだ滞納とは怪《け》しからぬものだ。
この高慢税を納めさせることをチャンと合点《がてん》していたのは豊臣秀吉《とよとみひでよし》で、何といっても洒落《しゃれ》た人だ。東山《ひがしやま》時分から
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