売れ口がありそうな談《はなし》である。そこで廷珸は悦んで例の鼎を出して仏元に渡した。廷珸は仏元に、より長い真剣を渡して終《しま》ったのである。
そこへ正賓は遣《や》って来た。そして画を検査してから、「售《う》れないなら售れないで、原物を返してくれるべきに、狡《こす》いことをしては困る」というと、「飛んでもない、正しくこれは原物で」と廷珸はいい張る。「イヤ、そうは脱けさせない。自分は隠しじるしをして置いた、それが今|何処《どこ》にある。ソンナ甘《あま》い手を食わせられる自分じゃない」という。「そりゃいい掛《がか》りというもので、原物を返せば論はないはずだ」という。双方負けず劣らず遣合《やりあ》って、チャンチャンバラと闘ったが、仏元は左右の指を鼎の耳へかけて、この鼎を還すまじいさまをしていた。論に勝っても鼎を取られては詰らぬと気のついた廷珸は、スキを見て鼎を奪取《うばいと》ろうとしたが、耳をしっかり持っていたのだったから、巧《うま》くは奪えなかった。耳は折れる、鼎は地に墜《お》ちる。カチャンという音一ツで、千万金にもと思っていたものは粉砕してしまった。ハッと思うと憤恨一時に爆裂した廷珸は
前へ
次へ
全49ページ中46ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング