い省悟《せいご》を発せしめられるような気味があるので、自分だけかは知らぬが興味あることに覚える。談《はなし》の中に出て来る人※[#二の字点、1−2−22]には名高い人※[#二の字点、1−2−22]もあり、勿論虚構の談ではないと考えられるのである。
 定窯《ていよう》といえば少し骨董好きの人なら誰でも知っている貴い陶器だ。宋《そう》の時代に定州《ていしゅう》で出来たものだから定窯というのである。詳しく言えばその中にも南定《なんてい》と北定《ほくてい》とあって、南定というのは宋が金《きん》に逐《お》われて南渡《なんと》してからのもので、勿論その前の北宋《ほくそう》の時、美術天子の徽宗《きそう》皇帝の政和宣和《せいわせんな》頃、即ち西暦千百十年頃から二十何年頃までの間に出来た北定の方が貴いのである。また、新定《しんてい》というものがあるが、それは下《くだ》って元《げん》の頃に出来たもので、ほんとの定窯ではない。北定の本色は白で、白の※[#「さんずい+幼」、107−12]水《ゆうすい》の加わった工合に、何ともいえぬ面白い味が出て、さほどに大したものでなくてさえ人を引付ける。
 ところが、ここに
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