るという噂を聞いた。虚談ではないらしい。日本でも時※[#二の字点、1−2−22]飛んでもないことをする者があって、先年西の方の某国で或る貴い塋域《えいいき》を犯した事件というのが伝えられた。聞くさえ忌わしいことだが、掘出し物という語は無論こういう事に本《もと》づいて出来た語だから、いやしくも普通人的感情を有している者の使うべきでも思うべきでもない語であり事である。それにも関わらず掘出し物根性の者が多く、蚤取《のみと》り眼《まなこ》、熊鷹目《くまたかめ》で、内心大掘出しをしたがっている。人が少し悪い代りに虫が大《おおい》に好い談《はなし》である。そういう人間が多いから商売が険悪になって、西の方で出来たイカサマ物を東の方の田舎へ埋《う》めて置いて、掘出し党に好い掘出しをしたつもりで悦ばせて、そして釣鉤《つりばり》へ引掛《ひっか》けるなどという者も出て来る。京都|出来《でき》のものを朝鮮へ埋めて置いて、掘出させた顔で、チャンと釣るなぞというケレン商売も始まるのである。もし真に掘出しをする者があれば、それは無頼溌皮《ぶらいはっぴ》の徒でなければならぬ。またその掘出物を安く買って高く売り、その間
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