歌のその第二句の揚州銅器多の銅器の二字が前の囃し言葉に連接しているので、骨董ということが銅器などをいうことに転じて来たことになるのである。またそれから種※[#二の字点、1−2−22]の古物をもいうことになったのである。骨董は古銅の音転などという解は、本を知らずして末に就いて巧解《こうかい》したもので、少し手取《てっと》り早過ぎた似而非《えせ》解釈という訳になる。
 また、蘇東坡《そとうば》が種※[#二の字点、1−2−22]の食物を雑《まじ》え烹《に》て、これを骨董羮《こっとうかん》といった。その骨董は零雑《れいざつ》の義で、あたかも我《わが》邦俗《ほうぞく》のゴッタ煮ゴッタ汁などというゴッタの意味に当る。それも字面《じめん》には別に義があるのではない。また、水に落つる声を骨董という。それもコトンと落ちる響《ひびき》を骨董の字音を仮りて現わしたまでで、字面に何の義もあるのではない。畢竟《ひっきょう》骨董はいずれも文字国の支那の文字であるが、文字の義からの文字ではなく、言語の音からの文字であって、文字は仮りものであるから、それに訓詁的のむずかしい理屈はない。
 そんな事はどうでもいいが、と
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