にかくに骨董ということは、貴《たっと》いものは周鼎漢彝玉器《しゅうていかんいぎょくき》の類から、下っては竹木雑器に至るまでの間、書画|法帖《ほうじょう》、琴剣鏡硯《きんけんきょうけん》、陶磁《とうじ》の類、何でも彼《か》でも古い物一切をいうことになっている。そして世におのずから骨董の好きな人があるので、骨董を売買するいわゆる骨董屋を生じ、骨董の目ききをする人、即ち鑑定家も出来、大は博物館、美術館から、小は古《ふる》郵便券、マッチの貼紙の蒐集家まで、骨董畠が世界各国|都鄙《とひ》到るところに開かれて存在しているようになっている。実におもしろい事で、また盛んなことで、有難い事で、意義ある事である。悪口をいえば骨董は死人の手垢《てあか》の附いた物ということで、余り心持の好いわけの物でもなく、大博物館だって盗賊《どろぼう》の手柄くらべを見るようなものだが、そんな阿房《あほ》げた論をして見たところで、野暮な談《はなし》で世間に通用しない。骨董が重んぜられ、骨董蒐集が行われるお蔭で、世界の文明史が血肉を具し脈絡が知れるに至るのであり、今までの光輝がわが曹《そう》の頭上にかがやき、香気が我らの胸に逼
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