よさそうな顔して欣然と人を待つ男一人。唐桟揃《とうざんぞろ》いの淡泊《あっさり》づくりに住吉張りの銀煙管おとなしきは、職人らしき侠気《きおい》の風の言語《ものいい》挙動《そぶり》に見えながら毫末《すこし》も下卑ぬ上品|質《だち》、いずれ親方親方と多くのものに立てらるる棟梁株《とうりょうかぶ》とは、かねてから知り居る馴染《なじみ》のお伝という女が、さぞお待ち遠でござりましょう、と膳を置きつつ云う世辞を、待つ退屈さに捕《つかま》えて、待ち遠で待ち遠で堪《たま》りきれぬ、ほんとに人の気も知らないで何をして居るであろう、と云えば、それでもお化粧《しまい》に手間の取れまするが無理はないはず、と云いさしてホホと笑う慣れきった返しの太刀筋。アハハハそれも道理《もっとも》じゃ、今に来たらばよく見てくれ、まあ恐らくここらに類はなかろう、というものだ。おや恐ろしい、何を散財《おご》って下さります、そして親方、というものは御師匠さまですか。いいや。娘さんですか。いいや。後家様。いいや。お婆《ばあ》さんですか。馬鹿を云え可愛そうに。では赤ん坊。こいつめ人をからかうな、ハハハハハ。ホホホホホとくだらなく笑うとこ
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