、お吉、我はのっそりに半口やって二人で塔を建てようとおもうわ、立派な弱い男児か、賞《ほ》めてくれ賞めてくれ、汝《きさま》にでも賞めてもらわなくてはあまり張合いのない話しだ、ハハハと嬉しそうな顔もせで意味のない声ばかりはずませて笑えば、お吉は夫の気を量《はか》りかね、上人様が何とおっしゃったか知らぬが妾《わたし》にはさっぱり分らずちっとも面白くない話し、唐偏朴《とうへんぼく》のあののっそりめに半口やるとはどういうわけ、日ごろの気性にも似合わない、やるものならば未練気なしにすっかりやってしまうが好いし、もとより此方《こち》で取るはずなれば要《い》りもせぬ助太刀頼んで、一人の首を二人で切るような卑劣《けち》なことをするにも当らないではありませぬか、冷水《ひやみず》で洗ったような清潔《きれい》な腹をもって居ると他にも云われ自分でも常々云うていた汝《おまえ》が、今日に限って何という煮えきれない分別、女の妾から見ても意地の足らないぐずぐず思案、賞めませぬ賞めませぬ、どうしてなかなか賞められませぬ、高が相手は此方《こち》の恩を受けて居るのっそりめ、一体ならば此方《こち》の仕事を先潜《さきくぐ》りする
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