勝《まさ》るものなし、ことさら塵土に埋もれて光も放たず終るべかりし男を拾いあげられて、心の宝珠《たま》の輝きを世に発出《いだ》されし師の美徳、困苦に撓《たゆ》まず知己に酬《むく》いてついにし遂げし十兵衛が頼もしさ、おもしろくまた美わしき奇因縁なり妙因縁なり、天のなせしか人のなせしかはたまた諸天善神の蔭《かげ》にて操りたまいしか、屋《おく》を造るに巧妙《たくみ》なりし達膩伽尊者《たにかそんじゃ》の噂はあれど世尊《せそん》在世の御時にもかく快きことありしをいまだきかねば漢土《から》にもきかず、いで落成の式あらば我|偈《げ》を作らん文を作らん、我歌をよみ詩を作《な》して頌《しょう》せん讃せん詠ぜん記せんと、おのおの互いに語り合いしは欲のみならぬ人間《ひと》の情の、やさしくもまた殊勝なるに引き替えて、測りがたきは天の心、円道為右衛門二人が計らいとしていと盛んなる落成式|執行《しゅうぎょう》の日もほぼ定まり、その日は貴賤男女の見物をゆるし貧者に剰《あま》れる金を施し、十兵衛その他を犒《ねぎ》らい賞する一方には、また伎楽《ぎがく》を奏して世に珍しき塔供養あるべきはずに支度とりどりなりし最中、夜半の
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