に毒づきしが、逸りきったる若き男の間違いし出して可憫《あわれ》や清吉は自己《おのれ》の世を狭《せば》め、わが身は大切《だいじ》の所天《おっと》をまで憎うてならぬのっそりに謝罪らするようなり行きしは、時の拍子の出来事ながらつまりはわが口より出し過失《あやまち》、兎せん角せん何とすべきと、火鉢の縁《ふち》に凭《もた》する肘《ひじ》のついがっくりと滑《すべ》るまで、我を忘れて思案に思案凝らせしが、思い定めて、おおそうじゃと、立って箪笥《たんす》の大抽匣《おおひきだし》、明けて麝香《じゃこう》の気《か》とともに投げ出し取り出すたしなみの、帯はそもそも此家《ここ》へ来し嬉し恥かし恐ろしのその時締めし、ええそれよ。ねだって買ってもろうたる博多に繻子《しゅす》に未練もなし、三枚重ねに忍ばるる往時《むかし》は罪のない夢なり、今は苦労の山繭縞《やままゆじま》、ひらりと飛ばす飛八丈《とびはちじょう》このごろ好みし毛万筋、千筋《ちすじ》百筋《ももすじ》気は乱るとも夫おもうはただ一筋、ただ一筋の唐七糸帯《からしゅっちん》は、お屋敷奉公せし叔母が紀念《かたみ》と大切《だいじ》に秘蔵《ひめ》たれど何か厭《いと》わ
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