お。馬鹿め馬鹿め/\/\、醜態《ざま》を見ろ、従順くなつたらう、野郎我の家へ来い、やい何様した、野郎、やあ此奴は死んだな、詰らなく弱い奴だな、やあい、誰奴《どいつ》か来い、肝心の時は逃げ出して今頃十兵衞が周囲に蟻のやうに群《たか》つて何の役に立つ、馬鹿ども、此方には亡者が出来かゝつて居るのだ、鈍遅《どぢ》め、水でも汲んで来て打注《ぶつか》けて遣れい、落ちた耳を拾つて居る奴があるものか、白痴め、汲んで来たか、関ふことは無い、一時に手桶の水|不残《みんな》面へ打付《ぶつけ》ろ、此様野郎は脆く生るものだ、それ占めた、清吉ッ、確乎《しつかり》しろ、意地の無へ、どれ/\此奴は我が背負つて行つて遣らう、十兵衞が肩の疵は浅からうな、むゝ、よし/\、馬鹿ども左様なら。
其二十六
源太居るかと這入り来る鋭次を、お吉立ち上つて、おゝ親分さま、まあ/\此方へと誘へば、ずつと通つて火鉢の前に無遠慮の大胡坐かき、汲んで出さるゝ桜湯を半分ばかり飲み干してお吉の顔を視、面色《いろ》が悪いが何様かした歟、源太は何所ぞへ行つたの歟、定めし既《もう》聴たであらうが清吉めが詰らぬ事を仕出来しての、それ故
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