眼も動かさず、あゝもう云ふてくれるな、あゝ、五重塔とも云ふてくれるな、よしない事を思ひたつて成程恩知らずとも云はれう人情なしとも云はれう、それも十兵衞の分別が足らいで出来したこと、今更何共是非が無い、然し汝の云ふやうに思案仕更るは何しても厭、十兵衞が仕事に手下は使はうが助言は頼むまい、人の仕事の手下になつて使はれはせうが助言はすまい、桝組も椽配《たるきわ》りも我が為る日には我の勝手、何所から何所まで一寸たりとも人の指揮《さしづ》は決して受けぬ、善いも悪いも一人で脊負つて立つ、他の仕事に使はれゝば唯正直の手間取りとなつて渡されただけの事するばかり、生意気な差出口は夢にもすまい、自分が主でも無い癖に自己《おの》が葉色を際立てゝ異《かは》つた風を誇顔《ほこりが》の寄生木《やどりぎ》は十兵衞の虫が好かぬ、人の仕事に寄生木となるも厭なら我が仕事に寄生木を容るゝも虫が嫌へば是非がない、和しい源太親方が義理人情を噛み砕いて態※[#二の字点、1−2−22]|慫慂《すゝめ》て下さるは我にも解つてありがたいが、なまじひ我の心を生して寄生木あしらひは情無い、十兵衞は馬鹿でものつそりでもよい、寄生木になつて栄
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