りこう》な人|等《たち》の物笑ひになつて仕舞へばそれで済むのぢや、連添ふ女房にまでも内※[#二の字点、1−2−22]|活用《はたらき》の利かぬ夫ぢやと喞《かこた》れながら、夢のやうに生きて夢のやうに死んで仕舞へば夫で済む事、あきらめて見れば情無い、つく/″\世間が詰らない、あんまり世間が酷《むご》過ぎる、と思ふのも矢張愚痴か、愚痴か知らねど情無過ぎるが、言はず語らず諭された上人様の彼御言葉の真実のところを味はへば、飽まで御慈悲の深いのが五臓六腑に浸み透つて未練な愚痴の出端《でば》も無い訳、争ふ二人を何方にも傷つかぬやう捌《さば》き玉ひ、末の末まで共に好かれと兄弟の子に事寄せて尚《たふと》い御経を解きほぐして、噛んで含めて下さつた彼御話に比べて見れば固より我は弟の身、ひとしほ他《ひと》に譲らねば人間《ひと》らしくも無いものになる、嗚呼弟とは辛いものぢやと、路も見分かで屈托の眼《まなこ》は涙《なんだ》[#ルビの「なんだ」はママ]に曇りつゝ、とぼ/\として何一ツ愉快《たのしみ》もなき我家の方に、糸で曳かるゝ|木偶《でく》のやうに我を忘れて行く途中、此馬鹿野郎|発狂漢《きちがひ》め、我《ひと》
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