せる石、弟が摘み上げたる砂を兄が覗けば眼も眩く五金の光を放ちて居たるに、兄弟とも/″\歓喜《よろこ》び楽み、互に得たる幸福《しあはせ》を互に深く讚歎し合ふ、爾時《そのとき》長者は懐中《ふところ》より真実の璧《たま》の蓮華を取り出し兄に与へて、弟にも真実の砂金を袖より出して大切《だいじ》にせよと与へたといふ、話して仕舞へば小供欺しのやうぢやが仏説に虚言《うそ》は無い、小児《こども》欺しでは決してない、噛みしめて見よ味のある話しではないか、如何ぢや汝等《そなたたち》にも面白いか、老僧《わし》には大層面白いが、と軽く云はれて深く浸む、譬喩方便も御胸の中に有たるゝ真実から。源太十兵衞二人とも顔見合せて茫然たり。
其十
感応寺よりの帰り道、半分は死んだやうになつて十兵衞、どんつく布子《ぬのこ》の袖組み合はせ、腕拱きつゝ迂濶※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]《うか/\》歩き、御上人様の彼様《あゝ》仰やつたは那方《どちら》か一方おとなしく譲れと諭しの謎※[#二の字点、1−2−22]とは、何程|愚鈍《おろか》な我《おれ》にも知れたが、嗚呼譲りたく無いものぢ
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