つと見ながら、あゝ構ふてくれずともよい、出ては行かぬは、風が吹いたとて騒ぐには及ばぬ、七藏殿御苦労でござりましたが塔は大丈夫倒れませぬ、何の此程の暴風雨で倒れたり折れたりするやうな脆いものではござりませねば、十兵衞が出掛けてまゐるにも及びませぬ、圓道様にも爲右衞門様にも左様云ふて下され、大丈夫、大丈夫でござります、と泰然《おちつき》はらつて身動きもせず答ふれば、七藏少し膨れ面して、まあ兎も角も我と一緒に来て呉れ、来て見るがよい、彼の塔のゆさ/\きち/\と動くさまを、此処に居て目に見ねばこそ威張つて居らるれ、御開帳の幟《のぼり》のやうに頭を振つて居るさまを見られたら何程《なんぼ》十兵衞殿|寛濶《おうやう》な気性でも、お気の毒ながら魂魄《たましひ》がふはり/\とならるゝであらう、蔭で強いのが役にはたゝぬ、さあ/\一所に来たり来たり、それまた吹くは、嗚呼恐ろしい、中※[#二の字点、1−2−22]止みさうにも無い風の景色、圓道様も爲右衞門様も定めし肝を煎つて居らるゝぢやろ、さつさと頭巾なり絆纏なり冠るとも被るともして出掛けさつしやれ、と遣り返す。大丈夫でござりまする、御安心なさつて御帰り、と突
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