も爲右衞門様も胆を冷したり縮ましたりして気が気では無く心配して居らるゝに、一体ならば迎ひなど受けずとも此天変を知らず顔では済まぬ汝が出ても来ぬとは余《あんま》りな大勇、汝の御蔭で険難《けんのん》な使を吩咐かり、忌※[#二の字点、1−2−22]しい此瘤を見て呉れ、笠は吹き攫はれる全濡《ずぶぬれ》にはなる、おまけに木片が飛んで来て額に打付りくさつたぞ、いゝ面の皮とは我がこと、さあ/\一所に来て呉れ来て呉れ、爲右衞門様圓道様が連れて来いとの御命令《おいひつけ》だは、ゑゝ吃驚した、雨戸が飛んで行て仕舞ふたのか、これだもの塔が堪るものか、話しする間にも既倒れたか折れたか知れぬ、愚図※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]せずと身支度せい、疾く/\と急り立つれば、傍から女房も心配気に、出て行かるゝなら途中が危険《あぶな》い、腐つても彼火事頭巾、あれを出しましよ冠つてお出なされ、何が飛んで来るか知れたものではなし、外見《みえ》よりは身が大切《だいじ》、何程《いくら》襤褸でも仕方ない刺子絆纏《さしこばんてん》も上に被ておいでなされ、と戸棚がた/\明けにかゝるを、十兵衞不興気の眼でぢ
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