理をかねて酷く叱るか出入りを禁《と》むるか何とかするでござりませうが、元はといへば清吉が自分の意恨で仕たではなし、畢竟《つまり》は此方の事のため、筋の違つた腹立をついむら/\としたのみなれば、妾は何《どう》も我夫《うち》のするばかりを見て居る訳には行かず、殊更少し訳あつて妾が何《どう》とか為てやらねば此胸の済まぬ仕誼《しぎ》もあり、それやこれやを種※[#二の字点、1−2−22]《いろ/\》と案じた末に浮んだは一年か半年ほど清吉に此地《こち》退かすること、人の噂も遠のいて我夫の機嫌も治つたら取成し様は幾干も有り、まづそれまでは上方あたりに遊んで居るやう為てやりたく、路用の金も調《こしら》へて来ましたれば少しなれども御預け申しまする、何卒宜敷云ひ含めて清吉めに与つて下さりませ、我夫は彼通り表裏の無い人、腹の底には如何思つても必ず辛く清吉に一旦あたるに違ひ無く、未練気なしに叱りませうが、其時何と清吉が仮令云ふても取り上げぬは知れたこと、傍から妾が口を出しても義理は義理なりや仕様は無し、さりとて慾で做出来《しでか》した咎でもないに男一人の寄り付く島も無いやうにして知らぬ顔では如何しても妾が居ら
前へ
次へ
全134ページ中111ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング