云ふて置け、と草履つつかけ出合ひがしら、胡麻竹の杖とぼ/\と焼痕《やけこげ》のある提灯片手、老の歩みの見る目笑止にへの字なりして此方へ来る婆。おゝ清の母親《おふくろ》ではないか。あ、親方様でしたか、

       其二十八

 あゝ好いところで御眼にかゝりましたが何所《どちら》へか御出掛けでござりまするか、と忙し気に老婆《ばゞ》が問ふに源太軽く会釈して、まあ能いは、遠慮せずと此方へ這入りやれ、態※[#二の字点、1−2−22]夜道を拾ふて来たは何ぞ急の用か、聴いてあげやう、と立戻れば、ハイ/\、有り難うござります、御出掛のところを済みません、御免下さいまし、ハイ/\、と云ひながら後に随いて格子戸くゞり、寒かつたらうに能う出て来たの、生憎お吉も居ないで関ふことも出来ぬが、縮《ちゞこ》まつて居ずとずつと前へ進《で》て火にでもあたるがよい、と親切に云ふてくるゝ源太が言葉に愈※[#二の字点、1−2−22]身を堅くして縮まり、お構ひ下さいましては恐れ入りまする、ハイ/\、懐炉を入れて居りますれば是で恰好でござりまする、と意久地なく落かゝる水涕を洲の立つた半天の袖で拭きながら遥《はるか》下《さが》
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