ども少し慣れると訳なく出来ますことで、片撚《かたよ》りに撚る。そうして一つ拵える。その次に今度は本数を減らして、前に右撚りなら今度は左撚りに片撚りに撚ります。順々に本数をへらして、右左をちがえて、一番終いには一本になるようにつなぎます。あっしあ加州の御客に聞いておぼえましたがネ、西の人は考《かんがえ》がこまかい。それが定跡《じょうせき》です。この竿は鮎をねらうのではない、テグスでやってあるけれども、うまくこきがついて順減《じゅんべ》らしに細くなって行くようにしてあります。この人も相当に釣に苦労していますね、切れる処を決めて置きたいからそういうことをするので、岡釣じゃなおのことです、何処《どこ》でも構わないでぶっ込むのですから、ぶち込んだ処にかかりがあれば引《ひっ》かかってしまう。そこで竿をいたわって、しかも早く埒《らち》の明《あ》くようにするには、竿の折れそうになる前に切れ処《どこ》から糸のきれるようにして置くのです。一番先の細い処から切れる訳だからそれを竿の力で割出《わりだ》していけば、竿に取っては怖いことも何もない。どんな処へでもぶち込んで、引《ひっ》かかっていけなくなったら竿は折
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