分で以《もっ》てさがしたり撰《えら》んだりして、買約束《かいやくそく》をして、自分の心のままに育てたりしますものです。そういう竹を誰でも探しに行く。少し釣が劫《こう》を経《へ》て来るとそういうことにもなりまする。唐《とう》の時に温庭※[#「※」は「たけかんむり+均」、37−11]《おんていいん》という詩人、これがどうも道楽者で高慢で、品行が悪くて仕様がない人でしたが、釣にかけては小児《こども》同様、自分で以て釣竿を得ようと思って裴氏《はいし》という人の林に這入《はい》り込んで良い竹を探した詩がありまする。一径《いっけい》互《たがい》に紆直《うちょく》し、茅棘《ぼうきょく》亦《また》已《すで》に繁《しげ》し、という句がありまするから、曲がりくねった細径《ほそみち》の茅《かや》や棘《いばら》を分けて、むぐり込むのです。歴尋《れきじん》す嬋娟《せんえん》の節、翦破《せんぱ》す蒼莨根《そうろうこん》、とありまするから、一々《いちいち》この竹、あの竹と調べまわった訳です。唐の時は釣が非常に行われて、薜氏《せつし》の池という今日まで名の残る位の釣堀《つりぼり》さえあった位ですから、竿屋だとて沢山《
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