ンパーの一行には負けてしまったのであります。ウィンパーの一行は登る時には、クロス、それから次に年を取った方のペーテル、それからその悴《せがれ》が二人、それからフランシス・ダグラス卿《きょう》というこれは身分のある人です。それからハドウ、それからハドス、それからウィンパーというのが一番|終《しま》いで、つまり八人がその順序で登りました。
 十四日の一時四十分にとうとうさしもの恐《おそろ》しいマッターホルンの頂上、天にもとどくような頂上へ登り得て大《おおい》に喜んで、それから下山にかかりました。下山にかかる時には、一番先へクロス、その次がハドウ、その次がハドス、それからフランシス・ダグラス卿、それから年を取ったところのペーテル、一番終いがウィンパー、それで段々降りて来たのでありますが、それだけの前古《ぜんこ》未曾有《みぞう》の大成功を収め得た八人は、上《のぼ》りにくらべてはなお一倍おそろしい氷雪の危険の路を用心深く辿《たど》りましたのです。ところが、第二番目のハドウ、それは少し山の経験が足りなかったせいもありましょうし、また疲労したせいもありましたろうし、イヤ、むしろ運命のせいと申したいこ
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