菊 食物としての
幸田露伴

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)然《しか》し

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)又|恰《あたか》も

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)※[#「草冠/(酉+隹)/れんが」、第3水準1−91−44、27−2]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)すが/\しい花の香や
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 菊の季節になつた。其のすが/\しい花の香や、しをらしい花の姿、枝ぶり、葉の色、いづれか人の心持ちを美しい世界に誘はぬものはない。然《しか》し取訳《とりわけ》菊つくりの菊には俗趣の厭ふべき匂《におい》が有ることもある。特《こと》に此頃流行の何玉何々玉といふ類、まるで薬玉《くすだま》かなんぞのやうなのは、欧羅巴《ヨーロッパ》から出戻りの種で、余り好い感じがしないが、何でも新しいもの好きの人々の中には八九年来此のダリヤ臭い菊がもて囃される。濃艶だからであらう。けれ
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