め》に明らかであった。そこで特《ことさら》に洋燈《ランプ》を取って左の手にしてその図に近※[#二の字点、1−2−22]《ちかぢか》と臨んで、洋燈《ランプ》を動かしては光りの強いところを観ようとする部分※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]に移しながら看た。そうしなければ極めて繊細な画が古び煤けているのだから、ややもすれば看て取ることが出来なかったのである。
画は美《うる》わしい大江《たいこう》に臨んだ富麗《ふれい》の都の一部を描いたものであった。図の上半部を成している江《え》の彼方《むこう》には翠色《すいしょく》悦ぶべき遠山が見えている、その手前には丘陵が起伏している、その間に層塔《そうとう》もあれば高閤《こうこう》もあり、黒ずんだ欝樹《うつじゅ》が蔽《おお》うた岨《そば》もあれば、明るい花に埋《うず》められた谷もあって、それからずっと岸の方は平らに開けて、酒楼《しゅろう》の綺麗なのも幾戸《いくこ》かあり、士女老幼、騎馬の人、閑歩《かんぽ》の人、生計にいそしんでいる負販《ふはん》の人、種※[#二の字点、1−2−22]雑多の人※[#二の字点、1−2−22]が蟻ほど
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